#79 僕の中から無くなったもの

そういえば、最近感じなくなった感情がある。

「嫉妬心」だ。

少し前まで、常に隣り合わせにいたこの感情も、今や影を潜めている。

このことに気がついたのは鷲田清一の本を読んでいた時。

お悩み相談本で、他人への嫉妬心というテーマで数ページ書かれていた。

その文章を読んだ時にふと思った。

「最近いつ嫉妬したっけ？」

思い出せなかった。

以前は、

恋人ができた男友達に。

容姿端麗な男友達に。

勉学に励む友達に。

モテモテな人に。

交友関係が広い人に。

とにかく、自分には無いものを持っている人に対して、嫉妬していた気がする。

そこで僕は問うてみた。

なぜこの感情が僕からなくなりつつあるのか。

そのヒントは「他人への興味」にある。

昔は自分にしか興味がなかった。

自分が人からどう見られるか、

自分という存在が一番の関心だった。

それが最近、わりと心の底から、他人に興味を持てるようになった。

この人の悩み、この人の経験、

この人の人となり。人柄。

そういったものを素直に受け入れて、自分に還元できるようになった。

最終的に自分に戻ってくるんだけど、

その戻り方が相手というフィルターをうまく通過して戻ってくるようになった、とでも言うべきか。

だから、今僕と付き合いのある人は、

遠慮なくなんでも話をしてほしい。

その話を聞けることが幸せだ。

それは見せかけの、建前じゃない。

だから安心して、自分の話をしてほしい。