#34 鼻を噛む
僕は幼い頃、人前で鼻を噛めなかった。
なぜなら、その時の音が恥ずかしかったから。
ジューッ、ズルズル、っていう音が恥ずかしかったんだ。
でも、最近は問答無用で鼻を噛む。
どこにいたって鼻を噛む。
しかも大音量で噛めるようになった。
これが良いんだか、悪いんだかわからないけれど。
まぁ一つ言えるのは、鈍感になった。ということかな。
かつての繊細さは影を潜め、僕の感覚は鈍くなっている。
これも社会の荒波の中で生き延びるための、進化なのか。
はたまた、ただの老いなのか。
でも僕はこの鈍感さにネガティブな印象を持っていない。
むしろ嬉しいまである。
なぜならとても生きやすくなったから。
よく常識のないじいさんとかいるじゃない?
あれに似てきてるんだと思う。
彼らってあらゆる感覚が鈍いじゃない?
だからあんな堂々とたんを吐けるじゃない?
そうよね。